スキップしてメイン コンテンツに移動

「地元の新規就農者を支えたい」取材先:アスカ有機農園 さま(小売店/京都)

「地元の新規就農者を支えたい」

聞き手:山口 麻那@ハンサムガーデン2025.10.29


ーーーーーーーーーーーー

 アスカ有機農園は、京都府産を中心とする有機野菜が数多く販売されている個人商店です。また、お客さんがお買い物をまとめてしやすいよう、店内には体への負担が少ない日用品や加工品も一緒に販売されています。場所は、京都府の嵐山に近い松尾大社の近所にあります。

 また、アスカ有機農園は、「京都オーガニックアクション」という京都府ならではの有機野菜の物流網の加盟店です。今回は、その「京都オーガニックアクション」の構築者の1人であり、アスカ有機農園代表の伊原彰康さんにお話を伺いました。

★「京都オーガニックアクション」公式HP

https://kyotoorganicaction.com/maps




ーーーーここからは、伊原さんとのインタビュー内容が続きますーーーーーー


山口:伊原さんが、最初に宇陀市をお知りになったのはいつ頃ですか。


伊原さん:30年も前のお話ですが、元々、前職では建築の土木関係でサラリーマンをしていました。全然今とは関係ないですね。その頃、たまたま奈良県宇陀市の針方面に機材センターがあったので、宇陀市はすでに馴染みがありました。


山口:確かに土木系とは全然有機農業と関係なさそうに見えますね。ぜひ、今のお店をされるまでの経緯を伺いたいです。


伊原さん:


①震災体験と無農薬野菜との出会い


30年前、阪神淡路大震災が発生した後、被災地の中で現場監督として復興工事に関わっていました。立ち入り制限区域にトラックで出入りできたことを活かし、現場の資材だけでなく食料も一緒に運んで、現地の人に配りたいと思いました。そこで、知り合いの農家から野菜を提供してもらい、被災地にボランティアで届け始めます。その農家が、たまたま農薬を控えて栽培されている人でした。これがきっかけです。


②八百屋としての独立と有機野菜への展開


宅配活動を続けるうちに、流通が回復した後も、現地の方からの要望を受けて宅配を継続しました。2〜3年のうちに需要が増え、野菜の取り扱いに本格的に取り組むようになりました。そして、建設業から八百屋への転身を決意します。八百屋開業後は、京都府を中心に各々の農家と直接取引を重ね、消費者に安心できる野菜を届ける体制を整えました。


山口:そうなんですか。なかなか想像がつかない展開で興味深いです。

ちなみに、現在取り扱われている農家さんは何件ほどありますか。


伊原さん:数えたことはありませんが、だいたい京都府内で30件、全国合わせたら倍の60件ほどあります。また、自分で農家と直接取引する以外にも、自分が設立に携わった「京都オーガニックアクション」という京都独自の物流網や、協力関係にある「株式会社 坂ノ途中」さんが集荷して運ばれてきた野菜も扱います。


山口:今お店で置かれているお野菜は、生産地で地域色などを意識されていますか。


伊原さん:元々は地元のお野菜、京都市内はもとよりですが、亀岡とか南丹や、あと京丹後の方なども扱います。京都は割と立長なので、割とその季節を先取りしたお野菜が意外と京都府内で揃っちゃうんですよね。



山口:そうなんですね。京都産が中心とのことですが、奈良県宇陀市の有機農産品を扱われている理由は何ですか。


伊原さん:京都の気候の関係で、意外とレタスや白菜、キャベツといった結球野菜っていうのは、京都で作っている方には難しいなと感じています。よっぽど長野とか軽井沢とかの方だったら上手くできると思うんですけど、京都はそういう野菜が少なくて。


山口:そうなんですか。


伊原さん:それで、たまたま探していったら、奈良県宇陀市の方とかでたくさん作られる農家さんがいらっしゃると知り、取り扱うようになりました。


レタスの場合、当初は宇陀市の別農場から取り寄せていましたが、同農場が事業を辞められたことを機に、新たな供給先を探していました。その中で、有機・高品質のレタスという条件に一致して見つけたのが、偶然ハンサムガーデンさんでした。鮮度が高く、長持ちするレタスは外食需要にも適しており、直接仕入れが始まりました。現在では宇陀のレタスやミニ白菜を販売しています。お客様からも、鮮度が良いと喜ばれています。


(30分のインタビュー中にも、実際に数名のお客さんが、レタスとミニ白菜を複数購入されていました)


山口:ありがとうございます。最後に、伊原さんが立ち上げに関わられた「京都オーガニックアクション」について伺いたいです。


伊原さん:京都オーガニックアクションは、BtoBで行う京都独自の共同物流便です。7〜8年ほど前に、自分と仲間の幾つかの八百屋さん等と一緒に立ち上げました。


具体的には、京都の有機野菜の生産者と販売店が直接取引をして、加盟店自らが集荷作業や運送を行っています。京都府内の北から南まで網羅しており、幾つかある集荷スポットへ生産者は野菜を持ってきます。そこで、八百屋ごとに野菜を分けて集荷し、自らトラックでお店まで運んでいきます。


規模ですが、近年徐々に運送量が増えてきました。今は 2トンの冷蔵トラックを週 4回走らせてますが、他の八百屋さんの分も一緒に運ぶんで、中が満載になってきました。なので、トラックをもう1車買おうか検討しているほどです。


届く野菜は、その日や前日に取れたものなので鮮度が良く、農家さんにとっても、割とそんなに大量に作ってない農家さんでも気軽に出荷してもらえるという利点があります。まだまだ試行錯誤の面はありますが、お互いに助け合えるようなシステムが作ろうと日々心がけています。


また、八百屋側は値段も適正価格で受け取るので、新規就農で有機や減農薬で栽培を頑張る若手の方が継続して農業をできるように意識しています。当店で取引している農家さんは若く、平均で40歳もいかないかもしれません。新規就農の方は、有機系の栽培方法を試みる方が多く、課題は継続して利益を出せるかどうかです。


もし、一般的な道の駅などでは、引退された高齢の農家さんが野菜を販売されており、消費者が買いやすい値段で、利益をさほど求めない値段設定をされていることが多いです。そのため、新規就農で利益を出したい若手農家が商売する場所としてはかなり厳しいです。しかし、都会から離れた地域の農家さんの場合、出荷先は道の駅の他に自分で開拓するのは容易ではありません。


だからこそ、京都オーガニックアクションを通じて、農家さんと八百屋さんをマッチングをしたいと考えております。


★「京都オーガニックアクション」加盟店一覧 

公式HP   https://kyotoorganicaction.com/maps


山口:そうなんですね。新規就農の方から見た既存の物流網には、そういった課題もあるのですね。また、京都オーガニックアクションの加盟店からお野菜を購入することで、新規就農された若手の有機系の農家さんを応援できるんですね。偶然ですが、わたしも加盟店の八百屋さんから何度かお野菜を買っていたので、間接的にお世話になっていました。色々と教えてくださりありがとうございます。


ーーーーーーーーーー

取材を終えて

山口


 今回の取材では、伊原さんならではの濃いお話が伺えました。

まず、伊原さんの経歴が印象深かったです。


ー土木系の方が、震災を通じて無農薬野菜との接点を持ち、宅配の拡大を経て八百屋を開業ー


 わたしはまだ大学生ですが、人生何があるか分からないと実感しました。


 あと、「京都オーガニックアクション」については、元々個人的に、京都市内の有機系を扱う飲食店の方々とお話をする際に、頻繁に「京都オーガニックアクション」という言葉を耳にしていたので、とても関心がありました。今回の取材にて、立ち上げ当事者の方から直接想いを伺えたのは大変希少な機会なのでありがたかったです。



アスカ有機農園 伊原彰康さん 

お忙しいところ、楽しく貴重なお話をしてくださりありがとうございました。

これからも、奈良県宇陀市の農産品をどうぞよろしくお願いいたします。


ーーーーーーーーーー

【取材先】

アスカ有機農園

〒615-0924

 京都府京都市右京区梅津尻溝町61-1

TEL    075-873-2110

FAX    075-873-2150

Email  asukafarm@gmail.com

公式HP https://www.asukafarm.com/index.php


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

編集者:山口 麻那(大学生)

今年の夏より、ハンサムガーデンでインターン中。
  食と病気と政治の関係性を知り、
有機農業に深く関心を持った。
 
当イベントに携わる前は、農産品の商談会用チラシの
デザイン/構成を担当。

コメント

このブログの人気の投稿

苗と宇陀の未来を育てる、浦田さん

  こんにちは!編集長のくわたさなです! 今回は奈良県宇陀市榛原というところで活動されている浦田尚紀さんをQ&A方式でご紹介いたします! 私は実際に浦田さんを取材させていただいて、植物を育てる上での一番のスタートを担われており、そこに注ぐ熱意、成長意欲をとても感じました。 それでは、どうぞご覧ください! 苗と宇陀の未来を育てる、浦田さん 浦田さんは、奈良県宇陀市で先代から受け継いだ花と野菜の苗を育てています。お客様との繋がりを大切にしながら、より良い苗作りに励む浦田さんに、仕事への思いを語っていただきました。 Q. 苗屋として独立したきっかけを教えてください。 苗屋になったきっかけは、先代の父の影響です。幼い頃から家業である花と野菜の苗作りに触れ、自然とこの仕事に興味を持つようになりました。大学で農業の専門知識を学び、卒業後すぐに家業を継ぎました。 Q. 主な仕事内容とやりがいを教えてください。 主な仕事は、花と野菜の苗を育てることです。年間100万ポット以上を生産し、ホームセンターや専門業者に卸しています。 やりがいを感じるのは、お客様との繋がりです。店頭で直接お客様と話し、苗作りのアドバイスをしたり、お客様から直接感謝の言葉をいただくことも多いそうです。浦田さんは、お客様との信頼関係を大切にしながら、日々苗作りに励んでいます。 Q. 宇陀市で苗屋をすることの魅力は何ですか? 宇陀市は、盆地特有の昼夜の寒暖差が激しい気候で、花や野菜の苗を育てるのに適した土地です。その気候を活かして、丈夫で生命力の強い苗を生産できるのが宇陀の魅力です。 Q. 今後の展望について教えてください。 これからもお客様との繋がりを大切にし、より良い苗作りに励んでいきたいです。また、若い世代にもこの仕事の魅力を伝え、後継者の育成にも力を入れていき宇陀の未来を育んでいきたいです。 桑田 早菜(類農園) kuwata@rui.ne.jp 自然を通して人と繋がることに楽しさを感じ、3年前に農の世界へ。 実行委員会最年少として、宇陀に隠れた魅力ある人をこの広報を通して発信中。

宇陀オーガニックビレッジフェス2025開催

申し込みはこちらから! 度重なる全体会議を経て、とうとうチラシとポスターができました! 宇陀オーガニックビレッジフェス 副実行委員長 松田@ハンサムガーデンです。 先行して配布している宇陀オーガニックビレッジフェス通信やこのブログでたびたび紹介してきましたが、イベント全体を見渡せるチラシができたことで、ここまできた!さぁ、参加募集開始だ!と気合が入ります。  2025宇陀オーガニックビレッジフェスチラシ 申し込みフォーム どの企画もみんなで練りに練りにこねくり回して作り上げてきた企画です。冬の畑仕込みに忙しい中、毎週のように走り回り、会議、登壇依頼、予算の調整、チラシ、オーガニック通信の配布。 ぜひご参加を。フォローを。待ってます。宇陀で! 松田麻由子@ハンサムガーデンが書いた 農家紹介記事→ 就農15年目の農家が宇陀で貫く露地農業のスタイル 生田ゆき@ロート製薬が書いた 宇陀市学校給食の記事→ 「“つくって終わり”にしない。顔の見える給食で、地域と子どもをつなぐ。」 — 現場のキーマン辻さん × 管理栄養士・松生さん 宇陀オーガニックヴィレッジフェス副実行委員長 ハンサムガーデン農場長 松田麻由子 宇陀市に家族で移住して19年め。在宅勤務の夫と、 大学生から小学生まで4人のこどもの母+ウサギ・ネコと暮らす。 機械工学出身の農家7年目。土壌医2級土づくりマイスター。

視点・農家から見るオーガニックビレッジ宇陀市

 オーガニック日本一目指す宇陀市 広報担当 :窪 一@NPO法人ハンサムガーデン 2025.09.03 I. 宇陀市オーガニックビレッジ構想と農家らが実行委員会をドライブする意義 宇陀市は2022年11月、 「オーガニックビレッジ宣言」(タップで外部リンクが開きます) を行い、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」と連携し、生産から消費まで地域全体で有機農業を推進しています 。大和高原の冷涼な気候と豊かな自然は有機農業に適しており 1 、市は研修会、フードロス削減、加工品開発、販路支援、食育、特定農業振興ゾーン設定、農地集積、スマート農業導入検討等を通じて「日本一のオーガニック先進地域」を目指しています 。 事業3年目となる本年度、いつしか本事業へ定常的に関わってきた5つの農業経営体と宇陀のネクスト農家( *1) 1軒のスタッフ、そして宇陀市農林課がオーガニックビレッジ事業をドライブするようになってまいりました。これは宇陀で耕作する他産業からの参入農家ら共通の声として、営農資産を次の世代へ継承してゆく時のとまどい、その裏に5年、10年で次世代へ知見と営農環境を継承する仕組みとしてオーガニックビレッジが機能するのではないか。生産農家の積極的な事業への参加こそが、成果に近づき、持続性をもつのではないかという着想が参加農家全員にあったと思います。  我が国の農政は「みどりの食料システム戦略」を通して、環境保全と有機農業の推進を両立させる政策を打ち出して参りました。それは我々の町村、宇陀市からみると遠くに立ち上った狼煙のようなものでした。2050年という着地点に向けて、我々農家らが勝手ながらの解釈で自分たちの生存戦略を重ねてみると、他人事でなくなります。だから、今こそ、一人も取り残さず、共に夢を語ろうと集ったのです。 (*1)   宇陀若手の営農経験 10年未満 農家の呼称 II. 宇陀市の農業概況と農家を取り巻く環境の理解 宇陀市は奈良県面積の約6.7%を占め、大和高原に位置します。山林が74%、農地が8%ですが、冷涼な気候を活かした農業が盛んです 2 。ミズナ、コマツナ、ホウレンソウ等の軟弱野菜、有機野菜、花き、大和野菜が高収益作物として栽培され、肉用牛生産も盛んで、その堆肥は有機農業に活用され循環型農業を推進しています 1 。 有機農業は...