スキップしてメイン コンテンツに移動

視点・農家から見るオーガニックビレッジ宇陀市

 オーガニック日本一目指す宇陀市

広報担当 :窪 一@NPO法人ハンサムガーデン 2025.09.03


I. 宇陀市オーガニックビレッジ構想と農家らが実行委員会をドライブする意義

宇陀市は2022年11月、「オーガニックビレッジ宣言」(タップで外部リンクが開きます)を行い、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」と連携し、生産から消費まで地域全体で有機農業を推進しています 。大和高原の冷涼な気候と豊かな自然は有機農業に適しており 1、市は研修会、フードロス削減、加工品開発、販路支援、食育、特定農業振興ゾーン設定、農地集積、スマート農業導入検討等を通じて「日本一のオーガニック先進地域」を目指しています 。

事業3年目となる本年度、いつしか本事業へ定常的に関わってきた5つの農業経営体と宇陀のネクスト農家(*1)1軒のスタッフ、そして宇陀市農林課がオーガニックビレッジ事業をドライブするようになってまいりました。これは宇陀で耕作する他産業からの参入農家ら共通の声として、営農資産を次の世代へ継承してゆく時のとまどい、その裏に5年、10年で次世代へ知見と営農環境を継承する仕組みとしてオーガニックビレッジが機能するのではないか。生産農家の積極的な事業への参加こそが、成果に近づき、持続性をもつのではないかという着想が参加農家全員にあったと思います。

 我が国の農政は「みどりの食料システム戦略」を通して、環境保全と有機農業の推進を両立させる政策を打ち出して参りました。それは我々の町村、宇陀市からみると遠くに立ち上った狼煙のようなものでした。2050年という着地点に向けて、我々農家らが勝手ながらの解釈で自分たちの生存戦略を重ねてみると、他人事でなくなります。だから、今こそ、一人も取り残さず、共に夢を語ろうと集ったのです。

(*1)  宇陀若手の営農経験10年未満農家の呼称

II. 宇陀市の農業概況と農家を取り巻く環境の理解

宇陀市は奈良県面積の約6.7%を占め、大和高原に位置します。山林が74%、農地が8%ですが、冷涼な気候を活かした農業が盛んです 2。ミズナ、コマツナ、ホウレンソウ等の軟弱野菜、有機野菜、花き、大和野菜が高収益作物として栽培され、肉用牛生産も盛んで、その堆肥は有機農業に活用され循環型農業を推進しています 1

有機農業は特に発展しており、県内有数の21経営体が営農しています。合計作付面積約22.62ha、年間売上3.6億円と、宇陀市農業産出額の約83%を占めます 1。山口農園、類農園、ハンサムガーデン、はじまり屋、奈良みらいデザイン、はやし米工房など「宇陀市有機農家ミーティング」という創発型プラットフォームを構成する経営体がオーガニックビレッジ事業を牽引し、有機的マーケティング価値の創造、栽培技術や農業経営スキル等の知見開発から東名阪のGMS各社や飲食店、自然食品店との取引、通販、異業種連携、加工品開発など多様な経営を展開しています 1

 日本で最初のオーガニックビレッジ宣言をした宇陀市では、オーガニックビレッジフェス2024で金剛一智市長が発言された「ほっとかへんで」宣言のもと、有機農業経営体と市・県職員らが連携しています。有機農業を核とした持続可能な町づくりを通じ、「日本一のオーガニック先進地域」として、参入する農家が夢を持って活躍できる未来の実現が期待されています。


窪 一 (所属:NPO法人ハンサムガーデン)
メール:jim@handsomegarden.com

就農17年目のレタス農家。
小農的オーガニックは生化学でも経営学でもなくて
キッチンと食卓にあるものだが信条。
本事業では広報を担当。



コメント

このブログの人気の投稿

苗と宇陀の未来を育てる、浦田さん

  こんにちは!編集長のくわたさなです! 今回は奈良県宇陀市榛原というところで活動されている浦田尚紀さんをQ&A方式でご紹介いたします! 私は実際に浦田さんを取材させていただいて、植物を育てる上での一番のスタートを担われており、そこに注ぐ熱意、成長意欲をとても感じました。 それでは、どうぞご覧ください! 苗と宇陀の未来を育てる、浦田さん 浦田さんは、奈良県宇陀市で先代から受け継いだ花と野菜の苗を育てています。お客様との繋がりを大切にしながら、より良い苗作りに励む浦田さんに、仕事への思いを語っていただきました。 Q. 苗屋として独立したきっかけを教えてください。 苗屋になったきっかけは、先代の父の影響です。幼い頃から家業である花と野菜の苗作りに触れ、自然とこの仕事に興味を持つようになりました。大学で農業の専門知識を学び、卒業後すぐに家業を継ぎました。 Q. 主な仕事内容とやりがいを教えてください。 主な仕事は、花と野菜の苗を育てることです。年間100万ポット以上を生産し、ホームセンターや専門業者に卸しています。 やりがいを感じるのは、お客様との繋がりです。店頭で直接お客様と話し、苗作りのアドバイスをしたり、お客様から直接感謝の言葉をいただくことも多いそうです。浦田さんは、お客様との信頼関係を大切にしながら、日々苗作りに励んでいます。 Q. 宇陀市で苗屋をすることの魅力は何ですか? 宇陀市は、盆地特有の昼夜の寒暖差が激しい気候で、花や野菜の苗を育てるのに適した土地です。その気候を活かして、丈夫で生命力の強い苗を生産できるのが宇陀の魅力です。 Q. 今後の展望について教えてください。 これからもお客様との繋がりを大切にし、より良い苗作りに励んでいきたいです。また、若い世代にもこの仕事の魅力を伝え、後継者の育成にも力を入れていき宇陀の未来を育んでいきたいです。 桑田 早菜(類農園) kuwata@rui.ne.jp 自然を通して人と繋がることに楽しさを感じ、3年前に農の世界へ。 実行委員会最年少として、宇陀に隠れた魅力ある人をこの広報を通して発信中。

オーガニック野菜・地産地消で広がる子どもの食育の可能性

「食べたい気持ち」を育む給食づくり 広報:生田 ゆき@ロート製薬 2025.09.17 宇陀市こども園 給食・食育担当 池住先生に聞く~オーガニック、地産地消の取り組み~ ――宇陀市の保育園では、地元のオーガニック野菜を取り入れた給食を提供していると伺いました。 池住先生: はい。ひと月に10日くらいの割合で、地元農家さんから届いた有機や地元野菜を給食に取り入れています。子どもたちにとっては「スーパーの野菜」だけでなく、「農家さんから届く特別な野菜」に出会える大切な機会です。色や形が珍しい野菜にも出会うことで、「ちょっと食べてみようかな」「これはどんな味なんだろう!?」という好奇心が育つんです。 ――ただ「食べさせる」のではなく、「食べたくなる気持ち」を総合的に引き出すのが食育なんですね。 池住先生: そうなんです。無理に「食べなさい」と言っても逆効果。むしろ、皮をむく体験や、年長さんがエンドウ豆のサヤをむいている姿を見て、小さい子が「お兄ちゃん、お姉ちゃんがむいたものをぼくも食べてみようかな」となる。単に有機野菜を使っているというだけではなく、 体験や人とのつながりを通じて総合的に子どもの食への好奇心を広げていく ことを大切にしています。 ――オーガニック野菜ならではの魅力はどんなところにありますか? 池住先生: 苦みやえぐみが少なく、やわらかくて食べやすいんです。例えば春菊を生で食べても大人が驚くほどおいしい。子どもにとっては「野菜ってこんなに甘いんだ」という体験になります。これは有機ならではの感動ですね。 ――地元農家さんとの連携も盛んだとか。 池住先生: はい。米は農家さんと年間契約で仕入れ、常に新鮮なものをいただいています。月に1回は有機米の日もありますよ。地元の農家さんでの畑での収穫体験も実施していますし、ポップコーン用のとうもろこしを育てる園もあります。子どもたちにとっては、 “どこで、誰が育てたか”が見える食材 が日常にあるのは本当に貴重です。 ――宇陀市全体で、子どもの「食べる力」を育てているのですね。 池住先生: ええ。食べることは生きることです。だからこそ「よく噛む」「残さず食べる」を大切にしています。頂いた命はこどもたちの身体に残る。食べることは尊く、たくさんの繋がりを感じれる。そういう感性を養ってほしいです。地域の農家さん、保護者...